カスハラ(カスタマーハラスメント)の効果的な対策は?企業が実施すべき対応や予防策を解説

カスハラとは「カスタマーハラスメント」の略称で、顧客が従業員に対しておこなうハラスメント行為です。正当なクレームとは異なり、不当な要求や暴言、威圧的な態度を含む言動が該当します。
本記事では、カスハラの定義やカスハラが企業・従業員にもたらす影響のほか、具体的なカスハラ事例から企業が取り組むべき対策方法まで詳しく解説します。ぜひ最後までご覧ください。
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目次
カスハラ(カスタマーハラスメント)とは

カスハラ(カスタマーハラスメント)とは、顧客からの理不尽な要求や暴言・威嚇など、従業員に精神的・身体的負担を強いる行為を指します。カスハラは一般的な苦情や正当なクレームとは異なり、従業員の精神的・心理的健康を著しく害し、健全な職場環境を害する行為です。
カスハラには、以下のような言動があります。
- 暴言、威嚇、脅迫
- 身体への攻撃
- 私的な要求や不当な要求
- 執拗なクレーム、長時間の拘束
顧客の要求の内容・手段が過度かつ威圧的であり、社会通念上の許容範囲を逸脱している場合、該当の言動はカスハラと言えるでしょう。
厚生労働省の調査によると、カスハラは近年増加傾向にあります。
「顧客等からの著しい迷惑行為」について、過去3年間において「相談件数が減っている」と回答した企業が11.4%なのに対し、「相談件数が増えている」と回答した企業は23.2%と2倍以上です。

このようにカスハラが増加し、社会問題として深刻化している現在、企業は早急に対策を講じる必要があります。
実際に発生したカスハラの事例3選

ここでは、厚生労働省がまとめた、実際に発生したカスハラの事例*について紹介します。
事例1:小売業従事者に対するカスハラ
小売業においては、接客における言いがかりに近いクレームや、執拗な謝罪要求が多く見られます。例えば、顧客が20年前に購入した商品の故障について、2日間にわたり企業や輸入元に電話をかけ続け「メンテナンスの必要性について説明されていない」と無償修理を強く要求したケースがありました。
また、顧客の揚げ足取りによるクレームにおいて、謝罪として物品要求があり、従業員が対応出来ない旨を伝えたところ「土下座して謝らないと許さない」と発言し、それを強要したケースもあります。
事例2:運輸業従事者に対するカスハラ
運輸業界では、電車やバスの遅延などが引き金となり、過剰なクレームや威嚇行為が問題となっています。例えば、鉄道の運転見合わせ時に「いつ発車するのか放送しろ」としつこく迫るだけでなく、その対応の様子を無断で動画撮影するといったケースが見られます。
さらに、駅員や乗務員への不満から足を踏みつけたり、傘で突くといった直接的な暴力行為に及んだり、「インターネットで流す」と脅迫して不当な補償を求める事例も報告されています。
事例3:医療従事者・福祉関係者に対するカスハラ
看護師や介護士に対して暴力を振るう・罵声を浴びせるといった加害行為が発生しているのも大きなカスハラの問題です。
また、職員の身体を無理に触ろうとするなど、セクハラ行為も深刻化しています。
これらの事例は、単なる顧客の不満・感情的な対応を大きく超えた明らかな人権侵害であり、深刻な社会問題として迅速な対応が求められます。
*参考:厚生労働省, カスタマーハラスメント事例集
カスハラが企業に与えるリスク

ここまで、実際に起きた深刻なカスハラ事例を紹介しました。では、カスハラが発生すると企業にとってどのようなリスクがあるのでしょうか。
従業員への悪影響
カスハラは、企業と従業員に多大な悪影響を及ぼすものです。
カスハラを受け続けることで従業員のモチベーションや離職率の上昇が懸念されます。特に、現場スタッフや管理職はカスハラ対応を任されることで、精神的な負担を直接受けやすいといえます。
離職率が上がると新たな人材の採用やその教育にかかるコストが増大するため、企業にとっての大きなダメージは避けられません。
また、従業員がカスハラ対応に追われることで、本来の業務やコア業務に集中できなくなり、職場全体の生産性や売上に悪影響を及ぼします。
さらに、執拗なクレームや不当な要求にさらされ続けると、従業員の心の健康に深刻な影響を与えかねません。うつ病や不安障害といったメンタルヘルスの問題が深刻化し、病欠や休職の増加によって悪循環を招くリスクが生まれてしまいます。
従業員への悪影響を防ぐためには、従業員が安心して業務に取り組める環境を構築し、「従業員のことを第一に考えている」という姿勢を示すことが重要です。
企業イメージの低下
従業員が「上層部はカスハラに対して適切に対処してくれない」と感じると、従業員がSNSや口コミサイトを通じて不満を発信する恐れがあります。結果として、労働環境が悪いという企業にとってネガティブなイメージが広がれば、顧客離れや人材採用の停滞など深刻な影響を招く可能性があります。
一方で、カスハラ対策を積極的に推進すれば、顧客や消費者から高い信頼を獲得することもできます。同時に、社会的責任を果たす企業としての評価を高めることにもなり、優秀な人材確保につながるのです。
法的な問題に発展する可能性
カスハラが発生した場合、顧客と従業員どちらからも法的責任を問われる可能性があります。
顧客から法的責任を問われるケースでは、差別や不当な扱いを受けたという主張や、企業側の不適切な対応によるクレームなどにより、顧客から法的責任を問われるリスクが存在します。
次に、従業員から法的責任を問われるケースでは、労働環境の悪化を理由に労働基準監督署へ訴えが起こされたり、損害賠償請求がおこなわれたりする可能性も否定できません。
事前に防止策を準備しておくことで、カスハラが発生した際に迅速かつ適切に対応できるようになります。
これらのリスクを回避するための具体的なカスハラ予防策は「カスハラを事前に予防するためには」の項目でくわしく説明します。
カスハラ対策義務化とは?

カスハラが社会問題となりつつある現在、国や自治体もカスハラ対策の強化に乗り出しています。「経済財政運営と改革の基本方針2024*」において、「カスタマーハラスメントを含む職場におけるハラスメントについて、法的措置も視野に入れ、対策を強化する」と明記されました。
また、「労働施策総合推進法」は2025年の法改正を視野に、カスハラ対策の義務化が進められています。
企業は今後、カスハラ対応の研修・教育の強化や、対応マニュアルの策定とその徹底など、より一層のカスハラ対策が求められるでしょう。
*出典:内閣府, 経済財政運営と改革の基本方針 2024 について
カスハラ対策における自治体の取り組み
政府だけでなく、自治体レベルでのカスハラ対策が加速しています。三重県桑名市では、2025年4月施行予定の「カスタマーハラスメント防止条例」を制定。主なポイントは以下の通りです:
- カスハラ禁止の明記:「何人も、就業者へのカスハラは禁止」と条例で明示
- 申請・認定制度:就業者や事業者は、市長にカスハラの確認・認定を申請可能
- 市長の判断・対応:市長がカスハラと認定した場合、事案の概要を公表し、加害者に警告。改善がなければ氏名公表も可能
この仕組みは、自治体トップが積極的に関与する先進的なアプローチとして注目されています。
ほか、東京都と北海道の取り組みも見てみましょう。
東京都が制定した「東京都カスタマー・ハラスメント防止条例 *1」では、企業に対して「カスハラ防止のための体制整備と従業員への配慮」を義務付けており、社会全体でハラスメント防止に取り組む姿勢を示しています。
北海道が制定した「北海道カスタマーハラスメント防止条例 *2」では、顧客、従業員、事業者が協力してカスハラ防止を目指すよう示しています。
*1 参考:東京都カスタマー・ハラスメント防止条例
*2 参考:北海道カスタマーハラスメント防止条例
ほかにも、カスハラ対策に熱心に取り組む自治体は、今後もさらに増えていくことが考えられます。
カスハラを事前に予防するためには

カスハラは、発生してから対応するのでは遅いケースも多く、事前に対策を整えることが重要です。この項目では、企業ができる主な予防策を4つ紹介します。
社内体制の整備
まず、カスハラ防止に関する社内規定を策定することが基本です。企業としての方針を明確化し、従業員がカスハラへの適切な対応を把握できる体制を整えます。
さらに、従業員のサポート体制を構築することも必要です。具体的には、以下のような施策が挙げられます。
- カスハラ問題を迅速に解決するための専用チームを設ける
- 従業員のメンタルケアやカウンセリングをおこなう
- 従業員を対象とした相談窓口を設置する
これらの取り組みを実施することは、カスハラに直面する従業員を支え、職場全体の安心感を高めることにつながります。
顧客対応マニュアルの作成
体系的な顧客対応マニュアルを整備し、カスハラ発生時の対応について具体的な手順を定めることが重要です。カスハラの予兆を早期に察知するためのチェックポイントを明確にし、実際に発生した際の対応フローを詳細に規定しましょう。特に、下記ポイントを押さえたマニュアル策定が効果的です。
カスハラ発生時の冷静な対応と記録の徹底上司への報告基準と報告手順のルール化顧客に対する共感と傾聴の姿勢チーム全体での協力と関連部署への報告フローの明確化行動指針と相談窓口の設置 |
顧客対応マニュアルは単なる対応手順書ではなく、あくまで不当な要求や威圧的な態度には毅然とした対応を取る方針を組織全体で統一することが重要です。
従業員へのトレーニング実施
カスハラに対して適切に対応するためには、ロールプレイングなど従業員へのトレーニングが欠かせません。従業員ひとりひとりがカスハラに関する理解を深め、実践的なスキルとして「カスハラとは何か」「どのように対処すべきか」を身につけることで、企業全体での対応力が向上します。
さらに、トレーニングの効果を発揮するためには、従業員の心理的安全性の確保が不可欠です。従業員が安心して働けるようスムーズにカスハラ被害を報告できる職場環境を整備することで、問題が深刻化する前に適切な対応を取れるようにしましょう。
監視カメラ・録画機器の設置
カスハラ対策として、監視カメラと録画・録音機器の設置は「予防」と「事後の対応」の両面で非常に効果的です。
まず、監視カメラの存在自体に抑止効果があります。顧客が「見られている」という意識を持つことで、カスハラ行為を思いとどまる可能性が高まります。
また、実際にカスハラが発生した場合、録画・録音された映像は非常に重要な客観的証拠です。この記録は加害者の特定に貢献するだけでなく、具体的にどのような行為があったのかを明確に示す証拠となります。
特に社内での問題解決プロセスや、必要に応じて警察への通報・法的対応をおこなう際に役立ちます。監視カメラや録画・録音機器は「言った・言わない」という水掛け論を防ぎ、公平かつ適切な判断を可能にする必要不可欠なツールです。
加えて、監視カメラや録画・録音機器の存在は、従業員の「カスハラ行為から守られている」という安心感につながるため、カスハラを予防したい場合はぜひ導入を検討してみてください。
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カスハラ対策の重要性を理解し、継続した取り組みを実施する

カスハラ対策は、従業員が安心して働ける環境を作り、企業の持続的な成長を支えるための非常に重要な取り組みです。本記事で紹介した具体的な事例や効果的な対策を参考に、自社に適した対応策を実施しましょう。
加えて、業種や業界を問わず、多くの企業にとって有効な対策が「記録の徹底」です。特に、監視カメラを活用して録音や録画をおこない、カスハラの状況を詳細に記録することで、後の対応や証拠収集に役立ちます。
従業員が安心して働ける環境づくりにも貢献するため、ぜひ監視カメラの設置を検討してみてください。
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セキュリティマーケター
和田 麗奈
保有資格:防犯設備士
株式会社セキュアに入社後4年間、セキュリティソリューション営業に従事。多岐にわたる業界・業種の課題解決に貢献する。
現在はマーケティングチームに所属し、現場での経験を活かしながら活動中。