日本のスマートシティ取り組み事例3選!スーパーシティとの違いも解説
日本では、スマートシティとスーパーシティの概念が急速に進化し、都市の持続可能性と住民の生活の質を高めるための新たな戦略として注目されています。
これらは、最先端技術とデータの活用を通じて、社会全体の効率化・便利さ・安全性の向上を図ることを目指す戦略です。例えば、監視カメラ・センサー・AI分析・ドローン・アプリなど、さまざまな技術を使った取り組みがおこなわれています。
本記事では、スマートシティとスーパーシティの基本概念と違い・スマートシティに取り組む市政の事例を紹介します。
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目次
スマートシティとスーパーシティの違いとは?
スマートシティとスーパーシティは、地域の課題を技術の力で解決していくという点で共通しています。
大きく異なるのは、スマートシティは、「技術目線・手段ベース」のアプローチが特徴なのに対し、スーパーシティが意識しているのは「住民・暮らし」だという点です。
また、スマートシティは特定の分野ごとに、できるところから取り組みを広げていくのに対し、スーパーシティでは最初から分野横断的に連携し大胆な規制改革とともに進めていくという違いがあります。
スマートシティとは
政府の施策におけるスマートシティの定義は下記のとおりです。
グローバルな諸課題や都市や地域の抱えるローカルな諸課題の解決、また新たな価値の創出を目指して、ICT等の新技術や官民各種のデータを有効に活用した各種分野におけるマネジメント(計画、整備、管理・運営等)が行われ、社会、経済、環境の側面から、現在および将来にわたって、人々(住民、企業、訪問者)により良いサービスや生活の質を提供する都市または地域
出典:スマートシティ – Society 5.0 – 科学技術政策 | 内閣府
つまり、スマートシティとは、インフラやサービスをデジタル技術で最適化し、効率化・環境負荷の削減・住民の生活の質向上を目指す都市のことです。
こうしたスマートシティの取り組みが進む地域では、利便性の高いサービスが次々と生まれています。
また、世界各国でも最新の技術を駆使したスマートシティへの取り組みが実施されています。世界の事例を知りたい方は、下記の記事からご覧ください。
世界に見るスマートシティの開発状況と取り組み事例
スーパーシティとは
スーパーシティの概念は大きく下記のとおりです。
AI及びビッグデータを活用し、社会の在り方を根本から変えるような都市設計の動きが国際的に急速に進展していることに鑑み、 暮らしやすさにおいても、ビジネスのしやすさにおいても世界最先端を行くまちづくりであって、 第四次産業革命を先行的に体現する最先端都市 |
つまり、スーパーシティとは、AIなどの先端技術を生活全般に活かし、住民が参画して未来社会を先行実現する都市のことです。
日本のスーパーシティ構想では、政府が「国家戦略特区」として指定する区域を選定し、AIやIoTなどの先端技術を活用した新たな都市モデルの実現を目指しています。政府は令和4年4月に、スーパーシティとして「茨城県つくば市」と「大阪府大阪市」を指定しました。
各地域は、人口減少、高齢化、地方創生といったそれぞれの課題に対応するため、規制緩和や税制優遇などの特例措置を活用しながら、スマートシティ化や新たな産業創出など、多様な取り組みを進めています。
スーパーシティ構想が必要となる背景には、地球環境問題や感染症など、世界の急速な変化が関係しています。
これらの変化に柔軟に対応するためには、従来の都市概念を超えた持続可能な都市が求められます。スーパーシティ構想は時代の要請に応え、AIやIoTなどの先端技術を活用することで、より持続可能な都市を実現するための新たな都市モデルなのです。
【補足】Society5.0とは
補足として、スマートシティと関わりの深い概念である「Society5.0」を紹介します。
「Society5.0」は、サイバー(デジタル)とフィジカル(実体)を融合させる最先端の技術を使い、社会課題の解決と経済発展を両立する人間中心の社会のことです。
Society5.0では、センサーやIoTを通じてあらゆる情報を収集し、AIが解析、それを現実社会にフィードバックすることで高い付加価値を生み出します。
つまり、スマートシティは「Society5.0」という未来社会の考え方を現実に形にする場だといえます。
地方創生とスマートシティの事例
本章では、日本のスマートシティの事例を3つ紹介します。
- 長野県伊那市の「スマートローカル」
- 東京都のSMART CITY TOKYO
- 大阪府のスマートシティ戦略
スマートシティは、デジタル技術の活用などを通じて地域の課題解決・市民生活の質の向上・効率化などを促進しており、自治体によってさまざまな取り組みが見られます。
事例1. 長野県伊那市の「スマートローカル」
長野県伊那市は、最先端技術を用いて「スマートローカル」の実現を目指しています。スマートローカルとは、地方自治体や地域社会が、情報通信技術(ICT)やデジタルツールを利用して地域の課題を解決し、住民の生活の質を向上させるための取り組みです。
山間地域の高齢化問題を解決するための、ICTを活用した伊那市の主な取り組みは下記のとおりです。
ぐるっとタクシー | ・伊那市で実施されているMaaS※を用いたサービス ・65歳以上の高齢者を対象にしており、利用者は自宅から目的地まで時間を選ばず移動できる ・現在は約2,500人が登録しており、利用目的で最も多いのは通院 |
モバイルクリニック | ・MaaSとオンライン診療技術を組み合わせた移動診察車 ・令和3年から伊那市医師会との連携により、6つの医療機関が1台の車両を共有する形でサービスを開始 |
モバイル市役所 | ・令和4年4月から稼働 ・証明書の発行や各種相談、選挙の期日前投票所としても利用されている |
ゆうあいマーケット | ・買い物に出かけることが困難な人向けの支え合い買物サービス ・地元スーパーの商品をケーブルテレビで注文し、物流用ドローンで配送するシステム |
▼ドローン物流の様子(伊那市)
事例2. 東京都のSMART CITY TOKYO
東京都は令和元年に、デジタル技術を活用して首都の潜在力を最大限に引き出し、都民の生活の質の向上を目的とした「スマート東京」と呼ばれる新たな社会のモデルの概念を提示しました。
これまでの取り組みは下記のとおりです。
東京都の人材育成・機器の購入・クラウドサービスやシステムの導入など、デジタル関連への投資は2021年に比べ2倍に増加しています。そのうちの約5割が「スマート東京」への経費となっており、デジタルファースト実現へ向けて積極的に取り組んでいることがわかります。
東京都のデジタル化を加速させるため誕生したのが、東京都が主導して設立した「GovTech東京」です。
GovTech東京では、データ分析・クラウドコンピューティング・AIなどの先進技術を用いて、行政手続きの簡素化や迅速化・公共情報の透明性の向上・市民と政府とのコミュニケーションの強化などを目指しています。
GovTech東京の取り組みの一例を下記にまとめました。
東京デジタル2030ビジョン | 行政の垣根を越えて、市民に向けたワンスオンリー(一度の入力で複数サービスを利用可能)やプッシュ型(必要に応じて自動で情報を提供)のサービスを実現する |
都庁各局・政策連携団体のDX推進 | 都庁の各局や政策連携団体と協力し、デジタルサービスの品質向上・デジタル化の推進・サイバーセキュリティ対策などの技術的サポートする |
区市町村のDX推進 | ・区市町村と協働し、デジタル化の専門性を活かした支援を提供する ・地方自治体のシステムの標準化や共通化、デジタル人材の育成を強化 |
データ利活用の推進 | 都民の生活の質(QOL)向上に貢献するため、データの効果的な利用を目指し、東京データプラットフォームの運用を支援 |
事例3. 大阪府のスマートシティ戦略
大阪府は、令和2年3月 「大阪スマートシティ戦略Ver.1.0 e-OSAKAをめざして」という計画をスタートしました。
コロナ禍などによる新しい生活様式の浸透を踏まえ、令和4年3月には「大阪スマートシティ戦略ver.2.0」を策定しました。
先端技術を用いて住民生活の質の向上を目指すと同時に、2025年の大阪・関西万博までにスマートシティを実現するための取り組みを進めています。
大阪スマートシティ戦略Ver.1.0 からver.2.0への変化は下記のとおりです。
大阪スマートシティ戦略ver.2.0では、データとテクノロジーの活用をさらに深化させ、市民参加と協働を重視した取り組みにシフトしています。
また、下表はこれまでの大阪府の取り組みの一例です。
オンライン手続の拡充 | ・約2,000手続きをR7年度までにオンライン化予定 ・R4年度時点で約700手続きがオンライン化済 |
全24区での大阪版スマート申請の運用開始 | 引越し(転入・転出・転居)や身近な方が亡くなられたときの、約90種類の手続きの申請書類がパソコン・スマートフォンで事前入力可能 |
2025年大阪・関西万博を契機とした自動運転バスの実装 | 万博開催時における自動運転バスの実装を目指し、関係機関との連携のもと、実証実験中 |
夢洲等における工事車両運行管理システムの構築 | ・夢洲等における整備事業では、インフラ・万博IRといった異なる事業の工事車両の円滑な通行が求められる ・各事業者による通行ルート・時間帯毎に通行台数を設定、設定した台数をAIカメラなどを活用して管理する工事車両運行管理システムを構築 ・令和5年4月より本格稼働している |
AI技術を活用した粗大ごみ収集申込受付の実施(令和6年3月より運用開始) | ・チャットボット応対による粗大ごみの申込 ・画像認識を活用した粗大ごみ処理手数料額の検索機能 ・粗大ごみ処理手数料のキャッシュレス決済を導入 ・タブレット端末を用いた業務運営 |
まとめ:最新技術を受け入れスマートな都市づくりを実現しよう
日本のスマートシティは、AIやIoTなどの技術を活用し、都市の課題解決や住民の生活の質向上を目指す取り組みです。
伊那市の「コンパクトシティ戦略」や東京都の「GovTech東京」、大阪府の「e-OSAKA」など、各地の事例からスマートシティが技術を活用して都市の効率と住民の生活の質を高めている様子を紹介しました。
スマートシティの取り組みは、地域が抱えるさまざまな課題の解決策として、今後ますます注目が高まるでしょう。
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