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世界に見るスマートシティの開発状況と取り組み事例

世界中の都市が抱える環境問題、交通渋滞、都市インフラ老朽化といった課題を解決するための新たなアプローチとして注目されているのが、スマートシティ開発です。

スマートシティとは、IoT・AI・ビッグデータといった先端技術を使って生活の質や幸福感を向上させる都市を指します。例えば、監視カメラやセンサーなどの情報をAIで分析し、交通渋滞の緩和や防犯対策を強化するといった取り組みもスマートシティの一例です。

スマートシティは、世界が抱えるさまざまな課題を解決し、より持続可能で快適な都市の実現が期待されています。

本記事では、世界各国のスマートシティの最新の取り組み事例をお伝えします。

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世界のスマートシティの開発状況

2024年6月に国土交通省政策研究所が発表した調査報告書には、諸外国におけるスマートシティの開発状況が詳しく報告されてます。それによると、各国がそれぞれの地域の課題を解決すべくさまざまな取り組みをおこなっていることが明らかになりました。

例えば欧州と北米では、交通渋滞・交通事故・環境問題を背景に、センサーでデータを収集し、都市管理や自動運転に活用するなどの技術が導入されています。

中東地域では、交通問題や脱炭素・産業の変革といった持続可能性を目指した課題に対応するため、豊富な資源を活用し、最先端技術を取り入れた次世代都市インフラの整備が進んでいます。

さらにアフリカ地域では、人口増加や都市化に伴う交通インフラ整備や移動手段の向上に向けた都市開発が見られました。

各国のスマートシティの定義

スマートシティの定義は、それぞれの国情や課題に合わせて策定されています。

そのなかでも、各国の定義に共通しているのが、スマートシティ化の目的を「生活の質や幸福感の向上」に置いている点です。

目的を達成するための手段に関しては、欧州・北米・中国では、すでに一定の情報技術が整っているため、IoT・AI・センシング技術・クラウドコンピューティングなどの先進技術を使ってデータの収集・分析を実施しています。

一方、ASEAN・インド・中東・アフリカでは、技術に限らず非技術的イノベーションも含めた幅広いアプローチが採用されています。

例えばインド政府のスマートシティ計画では、「市民に基幹インフラを提供することで適切な生活の質・クリーンで持続可能な環境と、スマートな解決策を提供するような街を推進すること」と定義しています。手段として用いる技術に関しては、情報技術やデジタル技術に限定していません。

各国のスマートシティの定義における目的と手段の一例は下記のとおりです。

目的手段
英国居住性・作業性・持続可能性を向上させるものICT
米国・都市と市民の安全性
・モビリティ(移動手段)
・持続可能性
・経済的活力
・気候変動に対処する
・スマートモビリティ パイロットブロジェクト(交通や移動をより良くしていくための新たな技術や概念)
・センサー
・データ収集・活用
デンマーク・居住性・持続可能性・繁栄の向上
・市民の参加を可能にする組織構造を持つ都市や社会
共通の技術的基盤に基づいて構築されたデジタルソリューション
シンガポール ・人々がより有意義で充実した生活を送ることができる
・すべての人に素晴らしい機会を提供する
・テクノロジーによってシームレスに実現する
デジタルソリューション
タイ ・サービスや都市経営の効率を高め、都市や住民のコストと資源の利用を削減
・持続可能で幸福な生活の質を確保
近代的知能技術とイノベーション
中国 ・都市生活環境の質を高める
・都市の管理と生産・ライフスタイルを最適化し、都市住民の幸福度を高める
・物理インフラと情報インフラの統合促進
・IoT・クラウドコンピューティング・ビッグデータ、12モバイルインターネット
・データ資源を核として統合・利用
韓国・さまざまな都市サービスで競争力と居住性が高められた持続可能な都市建設技術やICTなどの融合・複合化により構築された都市インフラ基盤
インド・市民に良質な生活環境を提供する
・クリーンで持続可能な環境づくり
・基幹インフラの構築
・コンパクトな地域で他都市のモデルとなる再現可能な成功事例を創出する
南アフリカ共和国・都市全体の幸福度を向上する
・すべての人々やコミュニティに利益をもたらす
・ICT・インダストリー4.0(第4次産業革命)などの技術
サウジアラビア・経済の多角化
・新技術を用いた産業振興
・持続可能な資源の利用
・直線高速都市
・エアタクシーの導入
・再生可能エネルギー
・海水の淡水化
参考:インフラシステム海外展開に向けた 海外のスマートシティ動向に関する調査研究|国土交通省政策研究所

各国のスマートシティの定義からは、それぞれの地域の課題を解決し、技術を用いて人々の生活をより豊かで快適にしようとする意図が読み取れます。

国ごとに見るスマートシティへの取り組み事例

本章では、海外のスマートシティの取り組み事例を3つ紹介します。

  1. シンガポール|Smart Nation Singapore
  2. 韓国|Copenhagen Connecting
  3. デンマーク|Copenhagen Connecting

詳しく見ていきましょう。

事例1. シンガポール|Smart Nation Singapore

シンガポールは、「Smart Nation Singapore」という国家戦略のもと、デジタル技術を駆使したスマートシティ化に積極的です。99%の政府サービスのデジタル化に成功しています。

参考:Smart Nation Singapore

「デジタルツイン」を活用し、都市全体の管理効率化や市民サービスの向上を目指しているのも特徴です。デジタルツインとは、現実世界にある物体やシステムを、コンピュータ上に仮想的に再現したデジタルモデルのことをいいます。都市管理の効率化や新たなサービスの創出につながるとして、注目されている技術です。

例えば、衛星写真や航空機に搭載された「LiDAR」というセンサーを使って、詳細な3Dデータを取得し、太陽光パネルの設置可能な場所の探索や航空機の侵入経路の確認などに利用されています。

また、シンガポールの北東部に位置する都市プンゴルでは、各種のスマートサービスを導入して地域のデジタル化を推進しています。

出典:令和4年度「スーパーシティ」 構想等に関する海外事例等の調査研究業務|内閣府地方創生推進事務局

スマートカメラに注目してみると、入退室管理・施設管理などのシーンで活用され、自動化やデータ分析による効率化に貢献しています。特にセンサーとの連携により、より高度な監視システムを実現している点が特徴です。

事例2. 韓国|New Songdo City

韓国・江南区で2001年にスタートしたスマートシティ計画は、2002年に韓国政府の働きかけでPOSCO E&C(ポスコ建設)により「New Songdo City」の開発が進められ、高度な都市機能が整備されました。

2019年には南部湾地域で、従来の製造業や物流産業に代わる新たな産業分野への転換が進み、特にIT・バイオ産業・文化産業などの成長が促進されました。 

New Songdo Cityの主な取り組みや導入した技術は下記のとおりです。

スマートシティプラットフォーム(基盤づくり)IFEZ(仁川経済自由区域)では、情報通信技術やデジタル技術を活用して、街全体のデジタル基盤を整備した
スマートシティアプリケーション防災・交通・エネルギー管理・都市保守管理などの異なる側面を網羅するスマートシティアプリケーションを、監視カメラなどと連携して導入している
管理システム監視カメラなどを活用した、スマートバス停留所・違法駐車取締システム・次世代信号制御システム・アクティブ防犯管理システムなど
リビングラボプラットフォーム市民がアイデアを出し、スマートシティのサービス開発に直接参画できるプラットフォーム。専門家とともに、具体的な都市課題の解決策を模索できる

スマートシティシステムを統括する統合オペレーションセンターでは、画像認識機能を持つカメラにより、リアルタイムで人や物の動きを監視し、不審な動きや異常を検知しています。例えば、争っている人や倒れている人、無断侵入を試みる人物などをカメラが捉えた際、システムは警報を発してオペレーターが即座に対応できる仕組みです。

さらに、カメラは周辺のセンサーとも連携しており、異常が確認された場所の近くにいるセキュリティスタッフや関係機関に迅速な通知が行われ、緊急事態に即座に対処できるようになっています。

また主要な交差点に設置された監視カメラに、自動ナンバープレート認識(ANPR)機能を搭載することで、車両のナンバーを即座に読み取り、警察や税務当局などの関連機関との情報共有が可能です。これにより、犯罪車両や不審車両の特定が素早く行われ安全性向上につながっています。

事例3. デンマーク|Copenhagen Connecting

コペンハーゲンでは、交通・エネルギー効率向上を図る「Copenhagen Connecting」プロジェクトが進行中です。

市内のセンサーやWi-Fiを通じて収集したリアルタイムデータとIoT技術を駆使し、市のインフラを最適化し、都市の課題解決にスマート技術を活用しています。

導入した技術や成果は大きく下記のとおりです。

【コペンハーゲンの主な取り組みや導入した技術】

City Data Exchange都市データを共有するプラットフォームで、情報の透明性とアクセス性を向上
CITS (Copenhagen Intelligent Traffic Solutions)交通の流れをスマートに管理し、効率的な交通システムを実現 
DOLL (Danish Outdoor Lighting Lab)街灯の最適化に向けた実証実験
Smart Citizen Borgerpanel (市民パネル)市民が直接プロジェクトに意見を出せるプラットフォームを提供
Borger.dk市民向けのポータルサイトを提供し、行政サービスへのアクセス向上
NemID行政サービスへの認証システム
参考:令和4年度「スーパーシティ」 構想等に関する海外事例等の調査研究業務

この他の取り組みとして、AIを利用して、各建物が必要とする暖房や換気のタイミングの予測や、系統負荷が低い早朝に暖房を稼働させることで暖房費を削減する制御などが挙げられます。

「Copenhagen Connecting」は、世界スマートシティ賞も受賞し、世界的にもその取り組みが認められています。

中国・杭州の「ETシティブレイン計画」:AIによる都市管理の実態

本章では、「ETシティブレイン」の主な取り組みと成果を紹介します。

「ETシティブレイン」とは、中国を代表するテクノロジーグループであるアリババグループが開発した、クラウド技術とAI技術を駆使した都市管理システムです。

2016年に杭州市とアリババグループが契約を結び、公共交通管理を皮切りにさまざまな分野に展開されています。

道路ライブカメラの映像をAIで分析

「ETシティブレイン」では、2,000〜3,000台のサーバーと4,000台を超えるカメラが設置され、道路のライブ映像をAIで分析しています。

AIの分析により交通状況に応じて信号を制御し、一部区間での通過時間を15%短縮することによって激しい交通渋滞の発生を抑制しています。

さらに、緊急車両の接近を検知し信号を青に切り替える仕組みで、到着時間を平均15分以上短縮する効果が得られました。

取り組み効果
車両異常を認めた場合、警察に自動通報AI経由で警察に寄せられている交通違反や事故情報は、多い日で500件
交通状況に応じて信号機の点滅を自動で切り替え救急車の到着時間が半減
一部の地域では、自動車の走行速度が15%上昇
蓄積データを元に渋滞要因を分析、新たに信号機や右折・左折レーンを設置一部区間では通過時間が15%短縮
4,000台超のライブカメラ設置により、杭州市内の43%をカバー市内の約半分のエリアにおいて、交通事故や交通違反、交通渋滞の発生時に約20秒でアラート発信が可能に
出典:「スーパーシティ」構想について|内閣府

ETシティブレイン計画で使用された技術

アリババクラウドのビッグデータ処理プラットフォーム「MaxCompute」を活用し、膨大な都市データをリアルタイムで処理・分析する最先端の技術を使用しています。

超高速処理・2015年には100TBのデータを377秒でソートする記録を樹立
・エクサバイト(1エクサバイト=10億ギガバイト)級のクラウドストレージと1テラバイトレベルのコンピューティング能力を保有
・ミリ秒単位の遅延でリアルタイム解析を実現
高精度画像認識・3,000以上の交通カメラの映像をリアルタイムで解析
・解析や分析の精度が向上し活用の幅が広がったことで、ビデオ利用率が11%から100%に向上
・低解像度でも90.46%の精度で車両を検出する自動点検技術を提供
ディープラーニング・10億ノードのネットワークでエクサバイトレベルのデータを処理
・特別な計算方法を用いて、複雑な状況からでも問題になりそうな部分を自動で見つけられる
参考:東アジア地域におけるスマートシティ開発に関する調査研究|公益財団法人 アジア成長研究所

ETシティブレインの成果

「ETシティブレイン」に取り組んだ結果、下記のような成果が得られたといいます。

【ET City Brainで得られた成果】
・杭州市中心部では交通カメラの導入により事故の特定精度が92%に達し、応答時間の短縮と移動時間の短縮が実現した
・蕭山区では監視カメラを活用した自動信号制御が、道路上の平均移動速度を15%向上させ、緊急車両の対応時間を半減
・公共衛生管理では、ビッグデータを活用して感染者の追跡と感染拡大の抑制に成功。特に浙江省ではコロナウイルスの流行を約1ヵ月で効果的に抑え込んだ

さらに、杭州市はスマートシティ関連事業を推進し、アリババのような大企業だけでなく、スタートアップ企業の成長も促進しており、スマートシティ関連企業の集積地として発展しています。

まとめ:テクノロジーの活用で安心・安全な都市づくり 

今回は、スマートシティ構築に向けての世界の取り組み事例を紹介しました。さまざまなテクノロジーを駆使して課題を解決に導き、世界中でより便利で快適な都市づくりが推進されています。

紹介した事例では、デジタルツインによる3Dデータを活用した太陽光パネルの設置可能な場所の探索、監視カメラとAIの連携による交通分析・防犯などさまざまな取り組みが見られました。

スマートシティの取り組みは、世界中で着実に広がりを見せています。技術の進歩と都市の課題解決への期待が高まる中、この流れは今後さらに加速するでしょう。私たちの暮らしをより快適で持続可能にする、テクノロジーを活用した安心・安全な都市づくりは、これからますます多くの都市に広がっていくと考えられます。

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