スマートシティを実現するデータ活用とは?事例と課題から見る未来のまちづくり
効率的で住みやすい環境を作り出すことを目的とし、各国で取り組みが進んでいるスマートシティ戦略。スマートシティでは、都市が持つさまざまなデータを収集・分析して活用しています。
オープンデータの活用で市民や企業の参加が促進され、デジタルツイン技術で都市計画や政策の精度が向上し、効果的な運営の実現ができたりなどの期待が高まっています。一方で、個人情報の保護や人的リソース不足、ノウハウの欠如など、課題も多いのが現状です。
本記事では、スマートシティにおけるデータ活用の事例や課題についてお伝えします。
なお、株式会社セキュアでは、既存の監視カメラシステムに増設することで人物・自動車・バイク・動物などの行動検知を実現する「SECURE AI BOX」を提供しています。カメラが収集したデータを活用し、スマートシティ実現に貢献するツールとして運用が可能です。
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目次
スマートシティにおけるデータ活用
スマートシティ戦略における取り組みでは、都市の効率性や住民の生活の質を向上させるために、センサーやIoT(モノのインターネット)、デジタルインフラから収集された膨大なデータが活用されています。
こうしたスマートシティのまちづくりで活用するためのデータの取得方法は、大きく3つに分けられます。
- 全国的に展開されるオープンデータを活用する
- 民間事業者等のデータを調達する
- 自治体やまちづくり団体などが直接データを計測する
参考:第1部 データを活用したまちづくりのヒント|国土交通省
「オープンデータ」とは機械判読に適したもので、営利目的、非営利目的を問わず二次利用可能なルールが適用され、無償で利用できるデータのことです。公共機関が公開するものと民間事業者が公開しているものがあります。
「民間事業者のデータ」は、携帯基地局による人流データなど、民間事業者から購入できるデータを指します。一方で「自治体やまちづくり団体などが直接計測するデータ」には、例えば自ら道路や施設などにセンサーやカメラを設置することで取得する、交通量・人流データなどが挙げられます。
これらの多様なデータソースを効果的に組み合わせ、AIなどの先端技術で分析することで、スマートシティは私たちの日常生活にさまざまなメリットをもたらしているのです。
事例1. オープンデータプラットフォームの構築|福島県会津若松市
会津若松市ではオープンデータを庁内外に公開し自由に活用してもらうことで、地域活性化を目指しています。
この取り組みでは、市の職員が手動でデータ公開する方法から、「DATA for CITIZEN」という新しいプラットフォームを使って自動的にデータを公開する方法に移行しました。その結果、職員の負担を減らしつつ、地域住民や企業が簡単にデータを利用できるようになりました。
【取り組みの成果】 データ利活用基盤のAPIから読み込んだデータをわかりやすく表示するアプリを公開し、データ成形などの行政の業務負荷が75%削減された地域住民や企業が自発的に参加するプロジェクトが増え、地域全体の活性化が促進された |
「DATA for CITIZEN」は、オープンデータの活用により、行政の効率化と地域全体の活性化という二つの成果を同時に達成した事例です。
参考:地方公共団体がオープンデータを利活用する際に参考となる事例|デジタル庁
事例2. デジタルツイン技術:「PLATEAU」プロジェクト|国土交通省
次に、デジタルツイン技術を活用したプロジェクトの事例を紹介します。デジタルツインとは、現実のモノやシステムをコンピューター上に再現し、リアルタイムで監視・分析する技術です。
デジタルツインをオープンデータとして公開することで、都市計画や空間デザインのシミュレーションが広く共有され、住民や企業がまちづくりに参加しやすくなる効果が期待できます。
出典:PLATEAU [プラトー] | 国土交通省が主導する、日本全国の3D都市モデルの整備・オープンデータ化プロジェクト|国土交通省
「PLATEAU(プラトー)」は、国土交通省が進めるデジタルツイン技術を活用した3D都市モデルの整備・活用プロジェクトです。
PLATEAUの活用事例として、渋谷区道玄坂を対象にした実験を紹介します。この実験では、歩行者用の空間を変えると人の動きがどう変わるかをバーチャル空間でシミュレーションしました。
【実証実験の概要】
目的 | ・都市空間の再編の影響を可視化する・データに基づいたまちづくりの意見交換をおこなう ・歩きやすく快適な都市設計の支援する |
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方法 | 1.道玄坂の現在と将来の姿を3Dモデルで再現し、VR空間として構築 2.人々にVR空間を体験してもらい、空間再編後の訪問意向を調査 3.①歩道を広げる、②歩道を広げオープンカフェを設置、③歩道を広げ歩行者天国にする、の3パターンで歩行者の動きをシミュレーション 4.シミュレーション結果をVRに反映し、空間再編の効果を視覚的に表現 |
この実験の結果、都市空間の再編の影響をより具体的にイメージしやすくなり、関係者の間で共通認識を形成することに役立ちました。
参考:ウォーカブルな空間設計のためのスマート・プランニング | Use Case | PLATEAU [プラトー]
スマートシティのデータ活用に関する2つの課題
最後に、データ活用する際に直面しやすい2つの課題について解説します。
いくつかある課題の中から、本章では、特に起こりやすい「個人情報の保護」と「ノウハウ・専門人材の不足」について取り上げます。
課題1.個人情報の保護
2023年4月より、改正個人情報保護法が地方公共団体を含む全ての機関に適用されるようになりました。これにより、企業も自治体も個人情報の取り扱いに対する責任を果たし、適切に管理することが求められます。
個人情報の管理にはいくつかの基本ルールがありますが、特に収集した情報がどのように利用されるのかを明確にし、関係者への説明責任を果たすことは大切です。
例えば都市のAIカメラで群衆の動きを解析するケースでは、個人の特定につながる情報が含まれることも少なくありません。カメラが作動中であることをカメラの設置場所に掲示するなどの措置をとりましょう。
なお、性別や年齢などの属性や、全身のシルエット画像等に置き換えて作成した人流データのみであれば、個人情報には該当しません。ただし、抽出元のカメラ画像や個人識別符号等、特定の個人を識別することができる情報と容易に照合することができる場合は、個人情報として扱う必要があります。
参考:「個人情報保護法」を分かりやすく解説。個人情報の取扱いルールとは? | 政府広報オンライン
参考:「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン」 に関するQ&A|個人情報保護委員会
課題2.ノウハウ・専門人材の不足
2021年に国土交通省が市区町村に実施した調査によると、約4割の市区町村が「まちづくりへの新たなデータの活用ニーズがある」と回答しています。
しかしながら、すでに活用している自治体は回答全体の5%に留まっているのが現状です。
調査結果からは、多くの自治体でデータ活用が進んでいない理由は、46%がノウハウ不足、40%が専門人材不足である点が明らかになりました。
出典:資料2 都市にかかわるデータの取得・デジタル対応やデジタル技術の活用|国土交通省
このようにデータ活用の重要性を認識しながらも、ノウハウや人材不足が大きな障壁となっている自治体も少なくありません。今後は体制強化や、具体的な効果の明確化などの対応が急務といえます。
また、「研修の実施」や「専門的な知識を持つ企業からのサポートを受ける」ことも、課題解決へ向けた施策の一つとしておすすめです。
まとめ:データの活用でより良い未来のまちづくりを加速しよう
スマートシティにおけるデータ活用について、その概要や事例、課題を紹介しました。オープンデータの共有や活用により、市民や企業が都市づくりに積極的に参加できる環境が整いつつあり、これまで複雑だった都市課題の解決が進んでいます。
一方で、今後、データの効果的な活用を進めるためには、個人情報の保護や専門人材の育成、リソースの確保などが欠かせません。
これらの課題を解決し、スマートシティ構築に役立つツールとして、株式会社セキュアでは「SECURE AI BOX」を提供しています。
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