インストアマーケティングとは?期待できる効果や国内の事例を詳しく解説
コロナ禍により家で過ごす時間が増え、以前よりも来店して買い物する価値が上がっています。特に重要視されているのが、店舗の販売力をあげるインストアマーケティングです。
しかし、実際にどのような施策をおこなって販売促進すればいいのか悩むことが多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、インストアマーケティングを実施して、販売力を強化したいときに知っておきたい、以下の内容を解説します。
- インストアマーケティングや関連用語の解説
- インストアマーケティングで期待できること
- インストアマーケティングの企業事例
- インストアマーケティングを実施するときの課題
インストアマーケティングは店舗の売り上げを上げるだけではなく、顧客との接点を作ったり、店舗のファン作りをおこなったりする際にも役立ちます。インストアマーケティングを実施する際に、お役立てください。
目次
インストアマーケティングとは?関連する3つの用語も補足
インストアマーケティングとは、店舗を起点として販売促進や売上拡大を図るためのマーケティングの考え方を指します。
インストアマーケティングを考える際には、店舗でどのような施策を行うのか考えなければいけません。例えば、商品の露出力を高めてアピールしたり、顧客の滞在時間が延びるような導線設計を考えたりとさまざまな手法があります。
インストアマーケティングに関連する以下の3つの用語を理解しておくと、具体的な販売手法を理解して効果的なプロモーションを実施しやすくなるのでおすすめです。
- インストアマーチャンダイジング
- インストアプロモーション
- スペースマネジメント
それでは、1つずつ用語を解説します。
【用語1】インストアマーチャンダイジング
インストアマーチャンダイジングとは、インストアマーケティングの具体的な販促手法を指します。例えば、店頭の商品の見せ方や陳列方法、取り扱う商品の見直しなどがあげられ、店舗での取り組みで販売促進や売り上げ拡大につなげる手法のことです。
インストアマーチャンダイジングは、以下の2つに大別できます。
- インストアプロモーション……店頭での販促活動
- スペースマネジメント……陳列や導線設計などの最適化
顧客がリピートして訪れたくなるような店舗作りや、予定していなかった商品を購入して顧客単価があがるようにするには「インストアプロモーション」「スペースマネジメント」をしっかり考えることが大切です。
インストアプロモーションは、店舗全体の販売力アップにつながり、スペースマネジメントは、商品の露出アップにつながる施策といえます。
それぞれの用語については、次の項目で詳しく解説していきます。
【用語2】インストアプロモーション
インストアプロモーションは、店頭でおこなう販売促進のための施策を指します。
インストアプロモーションは、以下の2つの手法に大別できます。
手法 | 内容 | 施策 |
---|---|---|
価格主導型 | 一時的に価格を引き下げ、購買意欲を高める、即効性が高い | 値引き、均一価格、増量パック、まとめ買いなど |
非価格主導型 | 来店した顧客に商品やサービスを告知したり、誘導したりして購買意欲を高める | POP、実演販売、テスター、デジタルサイネージなど |
低価格やお得感など価格からアプローチする価格主導型の手法と、POPやデジタルサイネージなど店舗での見せ方からアプローチする非価格主導型の手法があります。
価格主導型は、商品がお得に手に入るため顧客にとってはメリットが大きいものの、長期的に売り上げを拡大していくには不向きかもしれません。
そのため、価格主導型の手法は一時的に活用するのがよいでしょう。
また、最近では非価格主導型の手法のなかでも、デジタルサイネージなどの非接触型の施策に注目が集まっています。コロナ禍で実演販売やテスターの設置を控える店舗が多くなり、非接触で商品やサービスを訴求できるデジタルサイネージが活用されるようになりました。
デジタルサイネージの導入事例や費用対効果を知りたい方は、以下の記事もお役立てください。
参考:サイネージの費用対効果が高い3つの根拠!導入事例や活用のコツも紹介
【用語3】スペースマネジメント
スペースマネジメントは、商品の陳列棚や店舗の導線設計を最適化する施策を指します。顧客が目的の商品を見つけやすく、手に取りやすいように配置することが大切です。
店頭の棚割は、以下の流れで検討していきます。
- カテゴリー別に商品をグルーピング
- 販売数の実績から販売比率を計算
- 販売率に合わせて商品や数量選定
また、棚割を考えるときには、販売率だけでなく、商圏に合わせた商品を選び、競合店との差別化を図ることも考慮するとよいでしょう。
店舗の導線設計は、「フロアマネジメント」とも言われます。顧客の店舗での滞在時間を延ばし、各売り場を歩いて見てもらえるように導線を考えるのが一般的です。滞在時間が延びることで、手に取る商品が増えれば、購入数のアップにつながり顧客単価も上がります。
スペースマネジメントを実施することで、商品の露出を高めて顧客の購買意欲を刺激できます。
インストアマーケティングで期待できること3つ
インストアマーケティングを実施することで、どのような効果が期待できるのでしょうか。
インストアマーケティングでは、販売力を高めるだけではなく、以下の3つのことも期待できます。
- 店舗体験ができるため、ECにはない顧客との接点が生まれる
- 顧客と接点を持てるため、店舗のファン化につながる
- IT導入すれば顧客データを取得できるので、店舗作りに活用できる
インストアマーケティングを実施すれば、店舗体験を通して店舗のファンになってもらったり、商品やサービスとの偶然の出会いを生んだりすることで、顧客とのつながりを強化することが可能です。
それでは、インストアマーケティングで期待できる点を1つずつお伝えします。
【できること1】店舗体験ができるため、ECにはない顧客との接点が生まれる
インストアマーケティングを実施することで、ECでは難しい商品やサービスとの偶然の出会いの場を提供することが可能です。
例えば、店舗体験を通して店内のPOPを見て商品を手に取ってみたり、接客を受けて買う予定のなかった商品を買ったりと、商品やサービスとの偶然の出会いを生むことができます。
店舗で直接商品やサービスに触れることで、顧客の五感を刺激し、目的外の商品の「衝動買い」を促せるのが店舗の大きな強みといえます。コロナ禍において直接顧客とつながれる店舗の価値が今後も上がっていくと考えられるでしょう。
【できること2】顧客と接点を持てるため、店舗のファン化につながる
店舗では、顧客と直接接することができるため、店舗のファン化につながりやすくなります。例えば、店舗のファンになってもらうには、以下の体験を顧客に提供するとよいでしょう。
- 期待以上の感動の提供
- 満足度の高い体験の提供
- 共感できるコンセプトの提供
顧客の要望に合わせた接客やレジ待ち時間の短縮、既存顧客に対する会員サービスやポイントキャンペーンなど、特別感やお得感を提供します。
また、企業に対する愛着や信頼をあらわす「顧客ロイヤリティ」を高めていけば、店舗のリピート客となり、顧客単価のアップや口コミでの拡散や紹介にも広げていくことが可能です。
インストアマーケティングを実施すれば、店舗のファンを増やしながら、顧客ロイヤリティを高められます。
【できること3】IT導入すれば顧客データを取得できるので、店舗作りに活用できる
インストアマーケティングにITを導入すれば、顧客データを取得して、販売力をあげるための店舗作りに活用できます。
店頭にITを取り入れる方法として、デジタルサイネージの設置があげられます。
例えば、デジタルサイネージでは顔認証システムなどのカメラを用いて、以下の顧客データを集めることが可能です。
- 顧客の年齢や性別
- 店頭広告の視聴時間や視聴数
- 購買につながったのか
デジタルサイネージを利用して顧客データを集めれば、顧客に合わせた棚割を作成したり、導線設計を検討したりと顧客にマッチした店舗作りができます。
デジタルサイネージの効果測定でできることが気になった方は、以下の記事をご覧ください。
参考:デジタルサイネージの効果測定でできること!導入の流れや注意点も解説
インストアマーケティングの3つの事例
店舗の販売力を上げるためインストアマーケティングを実施したいものの、どのような施策を打てば良いのか迷うものです。そこで、3つの企業のインストアマーケティング事例を紹介します。
- カスミ
- TRIAL
- ユニクロ
どの事例もインストアマーケティングを実施して、顧客ロイヤリティを高めることに成功しています。インストアマーケティングの施策を考える際に、お役立てください。
【事例1】カスミ
茨城県を中心にスーパーマーケットを展開するカスミは、インストアマーケティングを実施して新たなスーパーマーケットの形を提示しています。
日用品などの非食品は取り扱わずに、食に特化した売り場作りをおこない、競合店舗との差別化を図った事例です。
スーパーマーケットは、基本的に自分で商品を見つけて買い物するセルフサービスですが、カスミの新業態店舗「BLANDE(ブランデ)」では、対面販売する売り場を作り、顧客との接点を増やしています。
また、以下の体験を提供して、他のスーパーマーケットにはないサービスを提供しています。
- 地元のレストランと開発した食事が楽しめるカフェ
- 会員が利用できるラウンジサービス
- 地元の人気シェフから学べるお料理講座の開講
他にはない商品が見つかる楽しさやコミュニケーションの場の提供など、スーパーマーケットに目的の商品を買いにくるだけではなく、顧客の滞在時間が増えるような店舗作りがされています。
食に焦点を当てた商品の取り扱いや対面販売の実施、顧客にとって居心地のよい空間の提供をおこない、顧客単価のアップや顧客ロイヤリティを高めることに成功した事例といえるでしょう。
【事例2】TRIAL
福岡県を中心に全国に展開している小売業のトライアルカンパニーは、AIを活用したインストアマーケティングを実施し、売り場のデジタル化を進めている事例です。
例えば、以下のデジタルサービスを店内に取り入れています。
- カートで会計が済ませられる「スマートショッピングカート」の導入
- 店内での顧客行動や棚の商品数が把握できる「リテールAIカメラ」の設置
どちらもトライアルカンパニーで開発したサービスです。
「スマートショッピングカート」はカートに付けられたタブレットに商品をスキャンすることで、レジを通らずに会計が済ませられます。カートのタブレットには、顧客に合わせたクーポンを表示することも可能です。
「リテールAIカメラ」で顧客情報を分析して、棚割や商品選定に活用されています。
また、店内にはデジタルサイネージを積極的に設置し、インストアマーケティングに役立てられています。
分析した顧客情報から興味や関心が高い広告を配信すれば、顧客に対して押しつけではなく、価値のある情報を提供できます。
トライアルカンパニーでは、デジタルを活用することで店舗を1つのメディアと捉えて、顧客に最適な情報を提供することで、店舗の価値を高めている事例といえます。
【事例3】ユニクロ
アパレル小売業のユニクロは、ブランドコンセプトが体感できる場として店舗を活用している事例です。店舗で価値ある体験を提供して、ブランドに共感してもらったり、ファン化につなげたりしています。
例えば、以下のようなブランドコンセプトを体感できるような店舗や、地域に合わせた店舗作りをおこなっています。
- 横浜ベイサイド店……ファミリー層の客層に合わせて、外観に遊具や滑り台を設置して、公園として遊べる作りに
- 原宿店……コーディネートに合わせた雑誌や音楽を提案、着こなしのヒントがもらえるアプリ「Style Hint」と連携したフロア作り
- UNIQLO TOKYO(銀座)……ブランドコンセプトを体感できる売り場作りや、地域の名店とのコラボ商品の販売をおこなう
また、アプリで注文した商品を最短2時間で店舗受け取りできるサービスや、店舗でライブコマースを実施するなど、オンラインとの連携も強化したインストアマーケティングも実施しています。
ユニクロのインストアマーケティングは、店舗体験の提供や、オンラインとの連携が成功している事例といえるでしょう。
インストアマーケティングを実施するときの課題3つ
店舗の売り上げを伸ばしていくために欠かせないインストアマーケティングですが、実施する上で3つの課題があげられます。
- フレームワークを考える必要がある
- 顧客情報が活かしきれない
- オンラインとの連携も考慮しなければいけない
インストアマーケティングにAIが導入されたり、オンラインとの連携を強化したりする際に、今までになかった新たな課題が出てきています。
それでは、課題を詳しく解説していきます。
【課題1】フレームワークを考える必要がある
インストアマーケティングの実施に限らず、マーケティングをおこなうには、「どのような戦略をたてるのか」「どのように分析するのか」などのフレームワークを考える必要があります。
インストアマーケティングを実施するには、解決したい課題や原因を明らかにして、店舗の現状を理解した上で戦略を練らなければいけません。店舗の課題や現状、顧客の要望を理解していれば、効果的な販売促進ができます。
例えば、インストアマーケティングの施策を考えるときには、以下の3つのフレームワークが役立ちます。
フレームワーク | 内容 |
---|---|
4C分析 | 「顧客価値」「顧客コスト」「利便性」「コミュニケーション」の4つから考える顧客視点のマーケティング手法 |
4P分析 | 「製品」「価格」「流通」「プロモーション」の4つから考える企業視点のマーケティング手法 |
STP分析 | 「セグメント化」「ターゲティング」「ポジション」の3つの視点で分析するマーケティング手法 |
闇雲に施策を考える前に、フレームワークを活用して店舗の立ち位置を把握してからインストアマーケティングを検討しましょう。
【課題2】顧客情報を活かしきれない
店舗にAIを導入して顧客データを集めたときに課題となるのが、情報の分析や解析です。
デジタルサイネージなどのサービスを導入しただけでは意味がありません。
顧客データは、店頭の棚割やディスプレイ、導線設計などの店舗作りやサービス向上に役立ちますが、調査データを分析するためのマーケティング知識が必要です。
分析できる人員の確保や育成、解析データがわかりやすいサービスの検討など、顧客データを活かせるようになるまでには時間がかかるかもしれません。
【課題3】オンラインとの連携も考慮しなければいけない
インストアマーケティングを考えていく上では、オンラインとの連携も考慮する必要があります。
顧客がオンラインとオフラインを行き来するOMO(オンライン・オフライン相互送客)は、これから当たり前に取り入れられる可能性が高く、オンラインも意識した販促活動を検討しなければいけません。
オンラインとうまく連携できれば、店舗でのイベントやキャンペーンの告知などにも活用できます。また、ECやアプリなどのオンラインを活用すれば、顧客との接点を増やすことにつながります。
顧客がオンラインと店舗をどちらも活用したくなるようなインストアマーケティングを考えることも今後の課題としてあげられます。
まとめ:顧客と直接つながれる店舗の強みを活かして、インストアマーケティングを実施しよう
コロナ禍において、店舗で買い物することの価値が高まり、店舗の販売力をあげるインストアマーケティングの重要度が高まっています。
顧客が商品を手に取りやすいように棚割や導線を考えたり、POPやディスプレイなどで商品の露出を高めたりと、インストアマーケティングにはさまざまな施策があります。
最近では、デジタルサイネージなどAIを導入した店舗での新たな取り組みに注目が集まっています。
顔認証システムなどを用いたデジタルサイネージを設置することで、顧客データを集めてプロモーションや店舗作りに活用できます。
また、オンラインとの連携も高めることで、顧客との接点を増やしていくことも可能です。
顧客が何度も足を運びたくなる店舗を作るためには、店舗とオンラインとの連携を強化しながら、ここでしか体験できない感動や満足感を提供する施策を考えなければいけません。
顧客と直接つながれる店舗の強みを活かして、インストアマーケティングを実施しましょう。