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フードディフェンスとは?その重要性と対策法

2008年、日本にて食の安全を脅かすショッキングな事件が起こりました。「中国製ギョーザ中毒事件」です。
この事件では、計10人がめまいや嘔吐などの健康被害に遭いました。
原因は、餃子を製造していた食品会社の元従業員による殺虫剤の混入です。犯人は無期懲役になり、製造元の食品会社は倒産しました。

このような危機から食の安全を守るための「フードディフェンス」という概念について解説していきます。

1.「 意図的な混入」から食品を守る「フードディフェンス」

フードディフェンスとは

フードディフェンスとは、「従業員等の関係者もしくは部外者による意図的な食品への異物の混入から食の安全を守る取り組み」を指します。

フードセーフティとの違い

フードディフェンスと似た概念として、フードセーフティがあります。フードセーフティとは、「食品の製造・加工の工程における意図しない異物混入のリスクを洗い出し、そのリスクを適切に管理し、食の安全を守る手法」を指します。

フードディフェンスとフードセーフティの違いは、想定している異物混入の原因が「意図的な犯行」によるものなのか「意図しない事故」によるものなのかです。

フードセーフティの有名な手法としてHACCP(ハサップ)があります。HACCPは、アメリカのアポロ計画において宇宙食の安全を確保するために発案された衛生管理手法です。その後世界に広がり、衛生管理の国際的な手法になりました。
日本においては、2018年食品衛生法が改正され、2021年6月からHACCPの導入・運用が完全義務化となります。

しかし、食の安全を守るためにはフードセーフティだけでは十分ではありません。なぜフードセーフティのみならず、フードディフェンスを考えることも必要なのか解説していきます。

2.フードディフェンスの必要性

フードディフェンスが注目される背景

フードディフェンスという考え方が注目されるようになったきっかけは、2001年にアメリカで起きた同時多発テロ事件だったとされています。アメリカ政府や議会は、この事件を受けて、あらゆるインフラをテロの脅威から守る取り組みを提唱しました。食品も重要なインフラの1つであるため、フードディフェンスという考え方が注目されるようになりました。

国内でフードディフェンスが注目されるきっかけとなった事件

国内でフードディフェンスが注目されるきっかけとなった事件として、2つご紹介します。

1つ目は、冒頭で紹介した「中国製ギョーザ中毒事件」です。概要は冒頭で紹介したので、そちらをご覧ください。
ところで、この事件を起こした犯人はどのような動機で犯行に至ったのでしょうか。犯人は、工場に15年間臨時職員として勤務していました。犯人は、何度も正社員への登用を会社に求めたそうですが、取り合ってもくれなかったそうです。そこで、食品に事故を起こし騒ぎになれば、会社側も待遇改善を考えるかもしれないと犯行に及びました。
常識を持った人なら考えられない軽薄な動機ですが、実際に起こってしまったのが事実です。

2つ目は、国内大手食品メーカーで起きた農薬の混入事件です。
犯人は契約社員の男で、2013年から2014年にかけて計9回にわたり、工場で製造していた冷凍食品12製品に農薬を混入させました。当大手食品メーカーは犯人の動機を「新人事制度の導入時に生じた給与面での不満を受け止めなかったから」としています。
当大手食品メーカーは、「部外者による意図的な異物混入」や「従業員による意図しない混入」は想定しており、対策もしていました。しかし、「従業員による意図的な異物混入」は想定しておらず対策もしていませんでした。

以上の様にフードセーフティだけでは、意図的な異物混入を防ぐ事はできません。なので、フードディフェンスを取り入れる事が必要となるのです。

3.意図的な混入の原因

先の事件での異物混入の原因は、従業員・元従業員によるものでしたが、原因となり得る要素はそれだけではありません。
意図的な異物混入事件の原因は大きく2つあります。それは「外部要因」と「内部要因」です。

外部要因

外部要因として考えられるのは、取引先や不審者による異物混入です。取引先の訪問時の規定(事前予約の確認、訪問理由の確認、身元の確認、それらの確認に応じた対応等)が曖昧だったり、無人時の防犯対策が甘かったりすると外部要因による異物混入のリスクが高くなります。

内部要因

内部要因として考えられるのは、従業員や元従業員による異物混入です。FDA(アメリカ食品医薬品局)によると、内部要因は外部要因と比較してリスクが高いとされています。なぜ内部要因の方がリスクが高いのでしょうか。以下の様な理由が考えられます。

  • 従業員は正規に施設に出入りできる。(入退室管理が甘い場合は、元従業員も出入りできる。)
  • 施設の活動や製品について理解がある。
  • 待遇面や人間関係の不満から犯行に及ぶ可能性がある。

以上の理由から、内部要因に対してはより一層厳重な対策が求められます。

 4.具体的なフードディフェンスの取り組み方

主なフードディフェンスの取り組みとして以下の4つが挙げられます。

  • 組織マネジメント
  • 人的要素(従業員等)
  • 人的要素(部外者)
  • 施設管理

参考:奈良県立医科大学『食品対策ガイドライン』

以下、それぞれ詳しく解説していきます。

組織マネジメント

組織マネジメントの具体的な取り組みとして以下が挙げられます。

  • 職場環境づくり
  • 教育
  • 勤務状況の把握
  • 危機管理体制の把握
  • 異常発見時の報告

先に紹介した異物混入の事件では、従業員や元従業員が職場に不満を持った事が要因となっていました。
よって、まずは職場に対して不満を抱かせないためのコミュニケーションや、軽い出来心で犯行に及ばないよう自社の製品・サービスの品質と安全に関する意識づけ・教育が重要です。
また、もし異物混入が起きてしまった際の調査や対応を迅速に行い二次被害を最小限に抑えるために、各従業員の行動履歴の記録や報告体制の構築も有効です。

人的要素(従業員等)

人的要素(従業員等)の具体的な取り組みとして以下が挙げられます。

  • 身元の確認等
  • 従業員の配置
  • 制服・名札等の管理
  • 私物の持込みと確認
  •  出勤時間・言動の変化等の把握
  • 移動可能範囲の明確化
  • 施設内への入退室管理

私物の持込や移動可能範囲等を明確に規定する事によって、従業員が異物混入を起こす能力を低減させる事が有効です。

人的要素(部外者)

人的要素(部外者)の具体的な取り組みとして以下が挙げられます。

  •  訪問者への対応
  • 駐車エリアの設定や駐車許可証の発行
  • 業者の持ち物確認
  • 郵便・宅配物の受取場所

取引先等の訪問時にどのような対応をするのか、明確に規定し徹底する事が有効です。

施設管理

人的要素(部外者)の具体的な取り組みとして以下が挙げられます。

  •  無人の時間帯の対策
  • 鍵の管理
  • 外部からの侵入防止策
  • 確実な施錠
  • 監視カメラの設置
  • 継続的な監視

入退室管理システムや監視カメラシステムを導入する事で、部外者の侵入を防止するだけでなく、従業員による内部犯罪の抑止力にもなります。

5.フードディフェンスに必要なシステム

以上のフードディフェンスを実現するには、物理セキュリティが必要になってきます。物理セキュリティをフードディフェンスにどのように応用できるか、ソリューション別に見ていきます。

入退室管理システム

入退室管理システムを導入する事により以下の事が実現できます。

  • 部外者や元従業員の侵入を防ぐ。
  • 食品工場内での作業者の移動可能区画の設定
  • 誰がどこにいるかをリアルタイムで把握する在室管理
  • 入退室時に日常的にセキュリティに触れる事で従業員のセキュリティ意識を向上させる
  • 入退室履歴を分析する事で、適切な人員配置を検討
  • 有事の際の入退室の履歴確認

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監視カメラシステム

監視システムを導入する事により以下の事が実現できます。

  • 事件発生の抑止
  • 部外者や元従業員の侵入の抑止
  • 作業態度確認
  • 映像の検証による作業効率改善
  • 製造ラインの監視、記録
  • 意識向上

セキュアでは、オンプレからクラウドまで、幅広い監視カメラソリューションを扱っています。

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まとめ

食の安全を守る上で必要な不可欠であるフードディフェンスについて解説してきました。
食の安全を守るためにはフードセーフティだけではなく、フードディフェンスにも取組んで行く事が必要です。

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